ココロまち共催による勉強会

 

かながわ国際交流財団との共催で勉強会をいたしました

「私たちはいかにして分断を超えられるのか」という表題で、現在、人気絶頂?の慶應義塾大学経済学部教授の井手英策さんをお招きして格差分断が進む日本社会における解決策を考える勉強会です。前半は井手さんの基調講演。

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後半はシンポジウム形式で、横浜市栄区で重度心身障碍者の支援で有名な社会福祉法人訪問の家より名里晴美さん、川崎市で在日朝鮮人支援で有名な社会福祉法人青丘社より三浦知人さんによるヘイトスピーチに関する報告です。

以下、公式報告より

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◆基調講演/人間の顔をした財政を取りもどす~「頼り合える社会」をめざして~◆

当日は、財政社会学がご専門の井手英策さんの基調講演から始まりました。
まず今の社会について、中間層の没落による転落の不安を抱える人たちが、さらなる弱者を傷つける異常な社会となっており、また、現役世代は何もかもが自己責任となっている社会であるとデータを示しながら指摘。
【データ】
現在、世帯収入が300万円以下は国民の34%。400万円以下は47%。500万円以下となると何と60%。一方、自分は(上中下の中で)下の所得層だと答える日本人は4%。可処分所得のピークは20年前。その1998年には自己責任(貯蓄で子育て・教育・医療・介護・保険・住宅もまかなう)が果たせなくなった男性労働者の自殺が8000人も増え、現在は家計貯蓄率もほぼ0%になっている。

このような自己責任社会が破たんしているからこそ、私たちは不安になっているとして、小田原ジャンパー問題や相模原事件についても触れ、弱者が弱者を叩き、留飲を下げる社会となっていること、そこには、承認欲求が満たされない個人がいて、だからこそ「等しく取りあつかう」という視点が大切となっているとのこと。

そして、そこから脱し、個人の尊厳を保障してだれもが堂々と生きられる「頼り合える社会」、「国民みんなが受益者になる社会」とするために、まず「税とは負担軽減である」という発想の大転換が必要となることを、データを示しながら提唱。
【データ】
仮に20兆円(例えば消費税なら7%)の大増税をしたとして、、、そのうち10兆円で財政赤字はほぼゼロになる。さらに残っている10兆円で、医療費自己負担金6兆円・大学授業料3兆円・介護自己負担8000億円・幼稚園保育園8000億円・障がい者福祉3000億円と分配することができる。そして、それは国民負担率で言えば、イギリスとドイツ(さらに、その上にはスウェーデンやフランス)の間くらいの負担率。

さらに、OECDなどのデータを示しながら、(現金ではなくサービスによる)現物給付を増やすことで、結果的に格差は縮小→結果的に1人あたりGDP成長率アップ(成長を下支え)→結果的に財政を再建することになるとのこと。

このように「奪い合い・自己責任」から「分かち合い・満たし合い」へ転換することで、私たち一人ひとりの人生にあるいくつかの負担急増期に「頼り合える」社会をつくることを提唱されていました。

◆パネルディスカッション/分断を超え、ともに生きる成熟した市民社会へ◆

続いてのパネルディスカッションでは、県内で活動されている2つの団体にまずご報告いただきました。井手さんの最新刊『財政から読みとく日本社会―君たちの未来のために』(岩波ジュニア新書・2017年発行)でも次のように書かれています。
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日本のどこかでくらす人たちを直接自分と結びつけ、その人たちのことを想像するのは簡単なことではありません。だからこそ、地域社会のなかに共感の領域をつくりだし、その延長線上へと「私たち」の領域を押しひろげていくことが大切です。国の税金を使って困っている人たちをささえるやさしさは、身近な社会での共感の先にあると思いませんか。(212ページ)
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そこで、2つの団体には、地域社会の多様な人たちの協力を得ながら、その活動を展開してきた経緯などについてお話しいただきました。

社会福祉法人「訪問の家」理事長の名里(なり)晴美さんは、横浜市栄区で地域との交流を続ける、重度心身障害者の通所施設「朋(とも)」での取り組みを紹介。30年前の法人開設当初には、障害者施設をつくることに対して地域の反対もあったけれども、それを乗り越え、今では、近隣の小学校とは年間を通して子どもたちとの交流があり、また地域の人たちとの運動会や成人を祝う餅つきなどで、長年、交流しているとのこと。
また空き缶回収で民家をまわる活動をしている中で、それと併せて防犯パトロールもするようになったこと(そして、そのことを通して、この地域の人たちは障害者が自分の家に訪ねてきてもすんなりと受け入れてくれる人たちだと感じたこと)などのエピソードもお話しされていました。

社会福祉法人「青丘社」事務局長の三浦知人さんは、川崎市川崎区で差別のないまちづくりの取り組みについて紹介。40年以上前から民族差別に向き合い、コリアンへの差別と排除に対する闘いから始まり、そしてコリアン以外の外国人への支援、日本人も含めた障害者や高齢者の施設の運営など徐々に活動の分野も広げていきながら、助け合いの地域活動、共に生きる活動の担い手を育てる取組みを紹介。
またヘイトデモとの闘いについては、市民を守るべき政治家や公人が差別を正面から否定しない社会の現状を憂い、そうした中では、国や自治体を動かしていくには地域から訴えていくことの重要性も唱えていました。

以上が当日の報告です。

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今年度の円卓会議シリーズは、チラシでご案内しておりますように全部で3回シリーズとなっています。

次回は、実践者の方々を対象とした勉強会形式を予定しています。講師には、名里さんや三浦さんと同じように、地域社会で「共感の領域」を広げる取組みをされている、ミノワホーム(愛川町)の馬場拓也さん、地域のお茶の間研究所さろんどて(茅ヶ崎市)の早川仁美さんをお招きする予定です。

3回目は、広く一般の方々を対象としたシンポジウムを開催します。再び井手さんをモデレーターとしてお招きして、地域で活動されている方々の実践を聞きながら、分断を乗り越えていく社会の姿について考えていきたいと思います。


2017年6月23日更新
加藤忠相

加藤忠相 について

高齢者もこどもたちも生き生きと、交流できる場所をつくりたい、25歳で1億円の借金をして起業する。今では、多くの方が県外からも見学が絶えない介護施設となっている。(株)あおいけあ代表。