抗生物質について

Facebookに投稿したところ思わぬ反響があったのでこちらでも発信したいと思います。

フロモックス
セフゾン
メイアクト
バナン

上記はよく外来で処方される抗生物質ですが、実はこれらは飲んで胃腸から血液に吸収される割合(生体利用率:バイオアベイラビリティといいます)が非常に低いという特徴があります。大体15~20%程度です。端的に言うと、飲んでも80~85%程度は排泄されてしまうということです。

点滴と飲み薬の抗生物質の違いは①生体利用率 ②投与量にあります。
点滴はもちろん直接血管内に投与されるので生体利用率100%、投与可能な量も多いです。
飲み薬は種類によってまちまちですが、世の中で多く処方されている上記の抗生物質は生体利用率が低く、投与可能な量は少ないです。
そして血液中に吸収された抗生物質が、細菌のいる臓器へ辿り着く率(移行率といいます)は臓器ごとに異なります。一般的に体の奥深くにある臓器へは辿り着きづらいです。

上記の抗生物質の投与可能量は300~600mg、上記と同系統の抗生物質のうち点滴の場合は1~2gと、明らかに差があります。前者はそのうち15~20%しか吸収されず、後者は100%吸収されます。治療効果としてどちらが高いのかは明白です。「そうは言っても飲むと治るよ?」と仰る方、それは薬の効果ではなくご自身の免疫力の賜物です。

効き目が乏しい上に量が非常に少ない抗生物質が高い頻度で処方され続けた結果が、耐性菌の出現です。最近様々な耐性菌が出現しつつあります。全ての抗生物質が効かない菌も報告されています。菌もやられっぱなしではないということですね。日本は欧米諸国と比べて感染症学の浸透が非常に遅く(感染症だけではありませんが…)、抗生物質の適正使用はなかなか浸透していません。感染症医がまだまだ少ないのでしょう。しかし最近では抗生物質の処方に感染症医の許可が必要な医療機関もあるようで、徐々に浸透してきてはいるようです。

自分たちの子供、孫世代のために抗生物質の適正使用という話は発信していけたらいいなと思っています。今のところそういう機会はありませんが。


2016年2月23日更新
片岡侑史

片岡侑史 について

総合診療科 医師。病気だけではなく人を取り巻くもの全てを総合的に診て、人が人らしく生き、死ぬことが出来るように支えることを目指す。2017年7月現在、藤沢本町ファミリークリニックにて勤務中。